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日本の文化・生活水準が高度に発達したここ50-60年、日本の人々は機能性と合理性、生産性ばかりを追求した住宅を多く造ってきました。
その結果、住宅は石油化学製品による新建材や接着剤に頼る新工法の多用により、息苦しささえ感じるような家となり、ひいてはシックハウス症候群の発生に至りました。

また、一見合理的と思われるエアコンや床暖房などの機械により環境を一時的に制御して快適性を高めた高気密・高断熱住宅は、住まいと環境とを隔絶し、昔からあった「人と自然の共生の関係」を失うことにつながりました。


古民家のように自然素材だけでできた住まいに住むことは、現代住宅の利便性や快適性からは遠ざかるものの、それ以上に健康的で豊かな感性を育む生活が出来ます。50-60年前まで、人と住まいの関係は自然抜きでは語れませんでした。人は自然の一部であり、また、自然に対し畏敬の念を持ち、地元の木や素材で家を建て、自然の恵みを受けるような家づくりをしてきました。


これからの住まい造りはどうあるべきでしょうか。
当事務所が考えるこれからの住まい造りのキーワードは「環境」です。
「住まいを通じた地球環境の保全」、「住まいと周辺環境との調和」、そして「居住環境の質の革新」がこれからの住まい造りに必要なことだと思います。


「地球環境」は、住まい造りが環境破壊の一因となっている今の日本で、緊急に向き合わなければならない最重要課題です。現在、日本の住まいの平均寿命は26年とも言われ、スクラップアンドビルドは環境破壊の代名詞となっています。これからの家造りは再生可能な材料及び工法を使用し、そして長く住み継ぐことで廃材にしないことにかかっていると考えます。私たちが得意とする古民家はいいお手本です。古民家は木・土他その土地の材料のみで造り、尚且つ金物や接着剤を使わないため解体・再構築が可能な工法で建てられています。


「住まいと周辺環境との調和」、これは今の日本人が一番忘れてしまっている感性です。日本のどこに行っても同じ外観の住宅ばかりが続き、山の中に突然黄色い家が作られ、町屋の続くところに西洋風の家が建ったりと、風土にあった特色ある町並み・地域のアイデンティティは失われ、いつの間にかそれが当たり前の日本の風景となってしましました。住まいの外観は自分の物ではなく、その周囲で生活する人々全員の物という意識を造り手は持つべきです。


そして、「居住環境の質の革新」とは、これらを実現する為に必要な、意識の改革です。快適性の基準は一人ひとり違います。しかし、これからの住まいは限りある資源や環境を考えながら、不便な中にも暮す楽しみを見出すなど、住まい造りを通してライフスタイルを見つめ直し、実行していくことが大切なのではないのでしょうか。

 


2013年、松永設計では持続可能な未来のために再生可能な材料・工法・エネルギーを用いた住まい造りと、心豊かな暮らし方の提案を行っていきます。

松永